生意気な彼女
グラリと揺れた体。
目の前を覆う黒。
鼻先に触れたヨウジくんの香り。
すべてを言い終える前に、抱きしめられていた。
ヨウジくんの腕の中に。
わたしがいる。
「………ヨウジくんのことが、」
「うん……」
頭の中がぐちゃぐちゃになって。
ぎゅうっと抱きしめられた心が痛くて。
「ヨウジくんのことが……。
ずっと、……好きだったの」
「……うん」
サクラに嫉妬するのは間違ってるって、わかってた。
サクラに遠慮して気持ちを伝えられないだなんて、そんなのいいわけだってこともわかってた。
ただ、一歩踏み出すことができなかっただけ。
自分の気持ちを伝える勇気がなかっただけ。
わたしは弱くて。
ずるい人間だ。