生意気な彼女
「………ヨウジくん、と?」
「うん。久しぶりに電話したら、会いたいね、ってなって」
「………そう、なんだ」
なんで今ごろになって、ヨウジくんの名前を出すんだろう。
はじめからヨウジくんとゴハン食べに行くって教えてくれたら、予定があるなんて言わなかったのに。
今さら「行きたい」なんて言えないじゃん。
「ほんと、ざんねん。ヨウジくんに、よろしく伝えて」
できるだけ明るく言ってみたけれど、カッと熱くなったのどを通る声は震えていた。
そのことに、サクラが気づいていないといいけど。
「うん。わかった。よろしく言っとく。ふふふ。
あ、ハルカも出る?」
買ったばかりだと言っていた財布から千円札を抜き出したサクラ。
「あ。ううん。わたしは、もう少し。
まだ、時間あるし」
冷めてしまった紅茶に視線を落としたわたし。
このあと予定あるし、と言ってしまった手前、ここにとどまることにした。