生意気な彼女

「……えっ、と。……お願い、って?」

少しだけ首を傾けたヨウジくんに、

「くだらないお願い」

私はもう一度そう言うと、履いていたショートブーツを脱ぎ捨てた。


周囲の目なんて気にしない。


憧れだったブランドのパンプスにゆっくりと足を滑り込ませる。

スッと背筋を伸ばせば、目の前に広がる世界がいつもと違って見えた。


「………ぜんぜん、違う」


たったの、10センチ。

それだけのことなのに。


なんだか胸がいっぱいだけど。

それでも私は、冷たい空気を胸の奥のほうまで詰め込んだ。


「すごーい!ヨウジくんの顔が近いよ!」

「…………」

「ねっ?」


私がニッコリ笑ってみせたのに、ヨウジくんは、

「なんで泣いてるの?」

って。

困った顔をしてる。

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