好きな人はニセ彼女。
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《奈菜side》
『……夏目、ちょっといい?』
耳元に残った大好きだった声。
瀬戸はなんでか夏目くんを呼び出した。
委員会が終わって、私が夏目くんと帰ろうとしたときに。
………おかげで一緒に帰れなかったじゃんか。
(瀬戸の馬鹿…………)
もう好きじゃない。そう分かってるのに、
“好き”って言えなかったことが心残りで。
彼のことを見る度、なんだか胸が痛む。
本当にもう、好きじゃない。
好きだから、胸が痛むんじゃない。
そのぐらい私でも分かる。