好きな人はニセ彼女。
好きって。
瀬戸が私のことが好きだって。
ぐるぐるとその言葉がループして、悲しそうな彼の顔が目に映って。
言葉なんて、出なくて。
私だって瀬戸のこと、好きだよ。
好きだったんだよ。
なんで今更私のことなんて……っ。
ぐっと口に力を入れると、唇に少しだけ痛みが走った。
……ちょっとだけ、血の味がする。
私は、いつだって馬鹿だな。
いつだって遅くて、器用じゃなくて。
そんなこと自分でもわかってた。