瞳をそらさないで
 わたしは、インテリア会社の総務部に配属されて二年目になる。まだまだ使いっぱしり感があり、文房具やパンフレットの補充を主に担当している。

 身長は、わたしのコンプレックスだ。威嚇する気がないのだけれど、たいていの年長者は同じ高さか見おろすことになり、相手はいい気がしないらしい。
 その上、べつに怒っているわけじゃないのだが、わたしの真剣な顔は、どうやら不機嫌そうにみえるようだ。わたしが真面目な顔で仕事をしていたら、たいていの男は、怖々声をかけてくる。
 背が高い。堅物で無愛想。きっと楽しい会話が望めないだろう。そんなわたしは、いままで彼氏はいない。


 仕事の合間に社内の女の子たちが話題にするのは、いつも営業部にいる男だった。その彼は、わたしの二年先輩となる。

 少し長めで爽やかそうなサラサラの黒髪。
 形の良い眉と切れ長の目。
 シャープな頬に魅惑的な口もと。

 彼は、見た目が格好良いうえに社交的で、どんな女の子に対しても、気さくで楽しげな冗談を口にする。そして、着実に仕事をこなしていく営業部のエースでもあった。
 女の子にもてないはずがない。

 けれど、軽そうな性格に感じられて、わたしにとっては苦手なタイプの男だった。
 それに彼は、横に並ぶと、たぶんわたしと同じ身長だと思う。見た目に格好良い男は、きっと自分より背の低い可愛い系の女の子を選ぶはずだ。

 ときおり彼がこちらを見るのは、ほんとうに、カナに興味があるに違いない。
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