キミノ、テ。
第一章 日下透[クサカ トオル]
元々、僕は人に対して興味を抱いたり、
自ら他人に打ち解けようとする方ではなかった。
他人というものを、端から信用したり、
仲良く騒いだり、愚痴をこぼしあったり、
誰かを愛したりすることは、
僕にとってなんの利もないと思っているからだ。
けれど人間というのは、なぜだか人を好み、
一人でいようとはしない。寂しい生き物だ。
そんな世の中の人間が僕はとても嫌いだ。
好きだよ、などと口にして、ひとときの恋に、
時間を無駄にする人たちが嫌いだ。
そう、僕は自分以外のものは必要と思っていない。
家族だって、友人だって、ただその形があるだけで、
僕はそれに感心はなにもないのだ。