キミノ、テ。

ランチの忙しい時間を終えたころだった。

忙しいと言っても、この店の忙しいとはたかが知れてはいるが、
一人で作業をする智子にはランチ時はかなり慌ただしいものだった。



智子は一人考え込んでいた。
尾崎さん、どうしたのかな。
考えたところで答えは見えないが、毎日顔を合わせ、
話をした相手が、お金を突然貸してくれなんて言うのは、
妙に気味の悪いことだ、と智子は感じていた。

なにか事情があるに違いない。
一万くらいなら無いものと思い助けてあげよう、
そう智子は考えながら、お皿を黙々と洗う。


考え込んでいると突然声がした。

｢すみません、コーヒーもらえますか」