幸せだって、笑ってよ。
そばに行きたいけど、行くのが怖い。

おばさんになった私は、彼の目にどう映るんだろう。

だいたい、何を話せばいいのかもわからない。

でも、挨拶くらいなら.......



戸惑うばかりで、時間だけが過ぎて行く。

そうこうしているうちに、母から電話が入った。

出てみると、聞こえるのは拓馬の泣き声。

ママが帰って来るまで寝ないってグズってるから、できるだけ早く帰って来てほしいと母が告げる。



その電話で目が覚めた。

そうだ。私は、拓馬のママなんだ。

好きだった人に会えたからって、ときめいている場合じゃない。



山田さんと元同僚達にお別れを言い、一足先に店を出る。

エレベーターを待つ間、窓から見える夜景を眺めていたら、あの日のことを思い出して切なくなったけど、今の私にはそんな感傷に浸っている暇はない。
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