幸せだって、笑ってよ。
エレベーターに乗ろうとした瞬間、誰かに腕を掴まれた。

驚いて振り返ると、腕を掴んでいたのは石田君。

扉が開くと、そのまま引きずられるようにエレベーターに乗せられ、壁にドンと背中を押し付けられた。



私を追いかけてきたせいか、彼は息を切らしている。

腕を掴んだまま、色っぽい息使いで顔を近付けられた私は、身動きが取れない。



「何で帰っちゃうんだよ。」

「え?」

「一言くらい、声かけろよ。」

「ごめん.....。」



彼にふざけた様子は見られない。

真っ直ぐに見つめる瞳に吸い込まれそうになって、心が揺れる。



「変わってないな。って言うか、キレイになった。」

「嘘?」

「嘘なんかついてない。」



予想外の言葉に、封印すると決めた気持ちが暴れ出す。

キスしてしまいそうな距離に、ドキドキが止まらなくなる。
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