幸せだって、笑ってよ。
「ねぇ、今、幸せ?」

「え?」

「幸せだって、笑ってよ。」

「.....。」

「そしたら、お前のこと、完全に諦められるから。」



胸の奥がキュンとする。

急にそう言われても、言葉が出ない。

今まで私のことを、忘れないでいてくれたの.....?



ときめく気持ちを思い出し、嬉しさと戸惑いが交錯する中、また携帯が鳴った。

その音で我に帰る。

そうだ、早く帰らなくちゃ。

私には拓馬が待っているんだから。



「うん、幸せ。.....だから、諦めて。石田君も、早くイイ人見つけなよ。」

「ふっ......そうだよな。わかった。今さら、ごめん。」



笑顔を作ると、彼も笑顔になって腕を解いてくれた。

その笑顔はやっぱりイケメン。

だけど、今の私に取って一番のイケメンは拓馬に違いない。



だから、この思いは忘れよう。

忘れていたトキメキをくれた彼に、感謝して。



だって、今の私は幸せだ。

夫に多少の不満はあるけれど、拓馬という恋人に、誰より愛されているんだから。
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