幸せだって、笑ってよ。
だけど、一度だけ、一線を越えたことがあった。

残業中、窓際で夜景を見下ろし、私がふと漏らした一言がキッカケで。



「最近、上手く行かなくて。何か疲れちゃった。」

「.....マジ?」

「こんなことなら、石田君にしとけば良かった。」

「.......。」



半分本気、半分冗談。

なのに、振り返った時には、私の唇と彼の唇は重なっていた。

窓を背にした私は、後ずさることもできない。

彼に抱きしめられたまま、放心状態で立ち尽くすだけだ。



それは数秒間の出来事だったと思う。

だけど、その時、心の中にあった疑問が答えを出した。



あなたは彼を選ぶべきだった。

一番居心地のいいのは、彼の方でしょう.....
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