姉の身代わりでも
来たその時
冬も深まってきた12月、職場ではちょっとした話題で持ちきりとなってた。
産休に入った女子社員の穴埋めとして入ってきた派遣社員の女性が、仁史のお気に入りになったと誰もが口々に囁きあってた。
営業事務に派遣された桜井さんという女性は、短大卒の21歳。ちょうど姉が亡くなった年と近い上に、栗色のふるゆわパーマでナチュラルにお嬢様メイクを施してた。
仁史が彼女を温かく優しい目で見つめる姿を見た瞬間、ああと思う。
(もう、私は必要ないんだな……)
姉の身代わりなんかでなく、本当に大切な人を見つけたんだとハッキリ悟ったのは。クリスマス色に染まる街で手を繋ぎ歩く2人を見たから。
ジュエリーショップで幸せそうに微笑み合う2人を見れば、誰が見ても幸せなお似合いのカップルで。
私は、そのまま美容院へ行ってこの3年伸ばしてきた髪をバッサリと切り落とし、黒髪に戻した。
もう必要がないものだからと床に落ち捨てられた栗色の髪は、私そのもののようだった。