あめあがり 【超短篇】
「あっあの……ハンコ僕が押そうか?」
弱々しい声で『ハルくん』が
話しかけてきた。
そして押してくれたのは
大人達の押す名前のハンコではなく
可愛いウサギさんのハンコだった。
「ハルくんはお盆休みどこかいかないの?」
「うん。心実ちゃんは?」
「行かないよ。ハルくんはどうして?金ないの??」
「ううん。お金じゃなくて、僕体が弱くて数日に一度は病院に行かなきゃならないから」
「逆にウチなんて体はピンピンなのに
金がギリギリなんだよ」
あはは。とハルくんが笑ってくれたのが嬉しかった。
私が思ってるよりもこの子いい子だ。
「僕ね今まで何かをやり切るってことをしたことなかったから
ラジオ体操をやりきろうと思ってね」
「そうだったんだ。なら何が何でも
皆勤しないとね!」
「それにね、心実ちゃんと一緒だと
頑張れそうな気がするんだ」
そうやって顔を背けたハルくんの
ほっぺはほんのり赤かった。