オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
イベント開始時刻11時を20分後に控え、
会場付近に次々と期待に満ちた表情を浮かべるお客様が集まり始めた。
それを察知したスタッフが鶯嬢に放送依頼を掛ける。
すると、すぐさま店内に発売イベントを知らせる放送が流れ始めた。
ますます集まる会場を尻目に
俺は希和と共に再びパネル裏で息を潜める。
そこへ、社長である父親を筆頭に天宮親子と三浦秘書が姿を現した。
軽く会釈し合い、今一度流れを確認する為
式次第が書かれたファイルに目を通していると。
「御影さん」
「………はい」
「今日は宜しくお願いします」
「こちらこそ」
凪彩は、社交辞令の挨拶を口にしながら
アイコンタクトで“三浦”の存在を訴えている。
だから俺も、挨拶とばかりに目を細め
彼女に対して小さく頷いた。
そんなやり取りを黙って見つめる希和。
彼女にとったら、この何てこと無いやり取りでさえ
きっと、苦痛でしかないのだろう。
だから俺は、天宮から少し距離を取り
希和と共にファイルに視線を落とし始めた。