オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「専務」
「始めるか」
「はい、お願いします!」
長谷川の合図を機に、ステージ裏に緊張が走る。
司会進行を担当するスタッフが
マイクで会場のお客様に商品概要を説明し始めた。
そして――――。
「それでは、今回の新商品『ボーソル』のメインモデル・天宮凪彩さんのご登場です」
無数のフラッシュが集れる中、天宮凪彩がステージに立つ。
「皆さんこんにちは、天宮凪彩です。この新商品『ボーソル』は、従来のヘアケア商品とは異なり、髪の成分でもあるアミノ酸に注目した商品です。傷んだ所を修復したり補うのではなく、アミノ酸の細胞を増やす事を目的としています。また、口にしても害のない安全なモノで構成しておりますので、毎日安心してお使い頂けると思います」
凪彩は片手で商品ボトルを手にして、
もう片方の手で自分の髪を梳くって見せる。
「如何ですか~?私の髪、艶々ではないでしょうか?」
会場に集まるお客様に訴えるように宣伝している。
司会者も天宮の話術に負けず劣らず、巧みに会場を盛り上げる。
そして、ステージ上にいるヘアモデルの子達を交えながら
順調にイベントが進行して行った。
俺はパネルの隙間からステージ上を眺めてると、
「凪彩さん、凄いですね。やはり、人の上に立つ人間は次元が違うんですね」
俺の横で希和がボソッと呟いた。
その表情はとても複雑な心境を映しているように思えた。