オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「御影専務の秘書の方ですよね?」
「はい、松波と申します」
「私は三浦と申しまして、天宮の秘書をしております」
「存じております」
「その、突然で申し訳ないのですが……」
「はい、何でしょう?」
「その、ミネラルウォーターを譲って頂けますか?」
「えっ?コレですか?」
「……はい」
彼の視線の先には、私が手にしているペットボトルが。
彼の手にも同じモノが握られていて、
イベントが始まる前にスタッフから配られたモノだ。
京夜様は要らないとおっしゃったから、
一先ず彼に差し上げてもいいわよね?
もし、取材後に喉が渇いたとおっしゃったら
その時、新しい物を買い求めればいいか……。
私は手にしていたボトルを彼に手渡すと、
「お願いついでにもう1つ宜しいでしょうか?」
「えっ?………あ、はい。何でしょう?」
より一層瞳に熱が籠る彼。
その表情から殺気に似た感覚を覚えた。
よく大会前に自分自身を鼓舞するような……そんな表情。
ミネラルウォーター1本に、普通そんな表情を浮かべるかしら?
不思議に思いながら彼の言葉に耳を傾けると、
彼は間を詰めて小声で話し始めた。