オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「希和さん、ごめんなさいね?……時間が迫っているの」
「…………はい」
「私は主人のもとに戻らないとならないから、彼女達に後の事は任せてあるわ」
「…………はい」
「それでは、また……」
「…………………はい」
お母様は笑みを浮かべながら、私の腕を軽く擦った。
これが最後の挨拶。
私はお母様に応えるように笑顔を向けた。
部屋を退室するお母様の背中に向い、一礼。
今日までの思い出を胸に刻み込んだ。
パタンとドアの閉まる乾いた音が室内に響く。
私は張り詰めた想いを吐き出すように深呼吸をした。
すると―――――。
「希和様」
「はいっ!」
空気と化していた御影の使用人の1人が口を開いた。
私は思わず肩がビクッと震えた。
……そうだ。
まだ終わってない。
ここから消えない事には………。
ドア付近にいた使用人2人が私のもとへと歩み寄る。
私はそんな2人に軽く会釈した。
すると、
「希和様、こちらのお衣裳にお召し替え下さいませ」
「えっ?」
「ここへ来られた際、今お召しになっているお衣裳がメディアの方々の目に触れております。ですので、こちらにお召し替え頂きたいのですが……」
「…………解りました」