オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


「お、おいっ!どういう事だッ!!」

「京夜様っ!」


今にも殴り掛かろうとする京夜様。

使用人さんの胸ぐらを掴もうと腕を伸ばしたのを咄嗟に止めた。


さすがに誰に見られてるかも分からないこの状況で

事を荒立てるのは賢明ではない。

例え、近くに人の気配が無いとしても……。


「落ち着いて下さい」

「落ち着いてられるかっ!」


怒り心頭の彼の手を握り返すと、

『それでは皆様、盛大な拍手でお迎え下さい』


ドア越しのアナウンスは、

私達の心境などお構いなしに進んでゆく。


私は、彼が婚約する姿を見届ける為に

わざわざこの衣装を着せられたの?

きっと、そうに違いない。

私にトドメの一発を食らわすかのように

私の心の中の京夜様まで奪うつもりなのね。


フフッ、何だ……。

とてもお辛そうに涙まで流して下さったから

私の事を大事に想って下さっているとばかり思っていたのに。

こんな仕打ち………あんまりだわ。


悔しくて切な過ぎて涙が滲んでゆく。

だけど、今彼を手放さなかったら

きっと私は………彼の事を諦めきれない。


私は掴んでいる彼の手からスッと手を離し、目の前のドアを開け


「行って下さい」


――――彼の背中を押し出した。


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