オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
百貨店内の催事場のチェックを済ませた京夜様は、
3階にある靴専門店『TAP』へと足を運んだ。
店内に入るや否や、京夜様は支配人のもとへと。
京夜様の後を追おうとすると、
スッとしなやかな指先が目の前に現れた。
それは、暗黙の了解で“距離を取ってくれ”というもの。
それを確認した私は素早く会釈し、足を止めた。
店内奥で何やら話し込んでいる。
けれど、それを詮索するのは野暮というもの。
元々、京夜様は一匹狼のような人。
例え、私であっても入り込めないテリトリーがある。
私は彼から視線を外し、少し離れた所に陳列してある紳士靴の前に。
幾つか手に取って、彼が履いている姿を想像していると……。
「悪い、待たせたな」
「あっ、もう宜しいのでしょうか?」
「あぁ。……父親にプレゼントするなら、買ってやるぞ?」
「えっ?……あっ、いえ、違います!ただ、見てただけです」
「………そうか」
「…………はい」
再び不服そうに視線を逸らした彼は、
腕を少し伸ばして、腕時計で時間を確認した。
そんな彼を眺めながら、
『あなたに似合う靴を探してたんですよ?……京夜様』
私は胸の奥でそっと呟いた。