オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
彼女を送り出して数分、俺はウォークインクローゼットにいた。
「確か、この辺にあった筈なんだが……」
無意識に独り言を吐きながら、血眼になって服を探す。
一度も袖を通した事のない服がズラリと並ぶ中、一着のジャケットを手に取った。
「よし、コレだ」
少し淡いカーキ色のミリタリージャケット。
着古した感じに味わいが出ている。
だが、その古臭い感じがあまり好きではなく、
クローゼットの奥に追いやっていた一着。
常にカチッと着こなす事が求められる立場で、
古着のようなモノを着るという事に抵抗があった。
けれど、今日ばかりは最高の相棒と言えるかもしれない。
インナーに白いTシャツを合わせ、ボトムスはブラックで決めた。
髪は無造作に遊ばせて、愛用の香水をプシュッと忍ばせる。
手首に吹きかけて擦るのではなく、耳の後ろにつけるのでもない。
毛先にほんの少しと肘の内側にほんの少し。
これがデキる男の嗜み。
愛車のキーを手にして、自宅を後にした。
どんよりとした天候の中、愛車を走らせる。
今にも雨が降って来そうな雲行き。
希和は傘を持って出たのだろうか?
あの格好では、肌寒いのでは?
本革のステアリングを握り、ガランと空いた助手席に視線が留まる。
「フッ……。傍にいたいのは……俺の方だな」
溜息交じりにアクセルを踏んだ。