オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
今自分が見ているこの人が、私の婚約者なんだ。
世の中の女性達がどんな手を使ってでも手に入れたいその場所に
今、この私が立つ事を許されたんだわ。
自分では自覚していなかったけど、
『女の子』を捨てて、
強い女性になる為の修行も
この人の為だったんだと思えば、
決して辛い日々なんかじゃなかった。
ううん、違う。
この人の隣に立つ為に必要な時間だったんだ。
これまでの日々が走馬灯のように脳裏を過り、
思わず涙腺が緩み始めた。
そんな私の傍に歩を進めた彼は母に丁寧にお辞儀し、
母に介添えされている私の手をそっと取った。
「幸せな俺らを見せびらかしに行くぞ」
「フフッ、……………はい」
とても楽しそうに不敵に微笑む彼。
久しぶりに見た魔王様だわ。
ついさっきまでスペシャルな王子様だったのに
この人は一体幾つの仮面を持っているのだろう?
きっと、まだまだ知らない一面があるに違いないわ。
この先訪れるであろう楽しい日々が目に浮かんで思わず頬が緩んだ。