オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「お待たせ致しました。会場へとご案内致します」
スタッフの声で緊張がピークに達した。
無意識に強張りだす頬。
震え出す膝。
一生懸命深呼吸しているのに、上手く酸素が吸えない。
大パニック状態の私に“大丈夫だから”と言わんばかりに笑みを向けながら、
京夜様はスッと左手を差し出した――――。
私は今一度深呼吸して、彼の左手にそっと手を添えた。
いつもと反対の立ち位置。
ちょっと違和感があるが、
彼が自然とエスコートしてくれるから安心できる。
伝統的な古典柄を基調に豪華絢爛に仕立てられた紅の八塩色の振袖。
3年先まで予約がいっぱいだという老舗の染元に
母親が直接出向いて手配してくれた京友禅。
その想いが詰まっている振袖姿で
会場の扉を目の前にして、胸がジーンと熱くなった。
スタッフの合図で重厚な扉がゆっくりと開くと――――。
眩い程のフラッシュと拍手の嵐。
そして、足元にはドライアイスによる演出が……。
本当に披露宴そのもの。
更には、プロの演奏家による生演奏。
会場内に心地よいメロディーが響き渡る。
立食式のパーティーの為、
歩を進める先々で祝福の言葉を頂きながら、
彼のエスコートで各円卓の間を縫うように歩み進める。