オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
父親がSPの仕事をしていなければ、決して会う事はないであろう……人。
政治家の娘でもなければ、皇族でもないのだから。
普段テレビで見るような険しい顔つきではなく、
至ってどこにでもいるようなおじ様だ。
「ご婚約、おめでとう」
「……ありがとうございます。いつも父が大変お世話になっております」
「いやいや、世話になっているのは私の方だよ。こんなに素敵なお嬢さんがいただなんてな。もっと早くに知ってれば、息子の嫁にしたのに……残念だ」
お世辞だと解っていても嬉しいものね。
官房長官の柔らかい物腰でほんの少し緊張が解れた。
トップの成績で入学したのにもかかわらず、
防衛大を卒業する時、自衛官の任官を拒否した私にとって、
父親の顔に泥を塗った事実は変わらない。
世の言う、税金泥棒なのだから。
お堅い父親にとって、私は汚点でしかないだろう。
そんな父親に、初めて娘として誇らしい姿を見せる事が出来た。
父と官房長官に会釈し、次のテーブルに向かう。
すると、
「疲れないか?」
「大丈夫です。体力なら自信がありますから」
「フフッ、それならいいが」
「京夜様、喉が渇いたのでは……?ずっと話してばかりなので」
「……ん、少しな。昨日の日本酒が効いてて、二日酔い気味だ」
「え?……そうなんですか?!」