オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
自嘲気味に笑みを浮かべる彼。
彼が二日酔いになるなんて、今まで見た事がない。
普段飲み慣れない日本酒が効いたのかしら?
父親が無理やり勧めたのもあるだろうけど……。
私はバンケットスタッフにノンアルコールのドリンクを貰って、
挨拶回りをしている彼にそっと手渡した。
すると、
「希和」
「はい」
「あそのこテーブルにいる黒いワンピースの女性、知り合いか?」
「黒いワンピース?…………いえ、知らない人だけど」
「…………そうか」
京夜様は私のトレードマークになりつつあるヘアピンに触れながら、
周りの人には気付かれないようにさりげなく呟いた。
10分ほど前に挨拶に伺ったテーブルにいた女性。
隣にいる男性が彼のお父様のお知り合いだとかで、
簡単に挨拶をしたんだけど……。
京夜様に言われて少し気になり、
さりげなく何度か視線を向ける度に何故か視線が合う。
―――――完全に私を見ている。
何故かしら?
もしかして、京夜様のファンだとか?
巷では有名な御曹司だし、御曹司じゃなくたって超イケメンだもの。
雑誌やテレビで何度も映ってるから、認知度も高いし。
そんな彼の婚約者が私だから?
どこにでもいるような庶民の女が婚約者だから?
だから、許せなくて………睨んでるの?
視界に捉えた女性は、何故か……私を睨んでいた。