オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
彼女が言葉を濁して差し出したのは、一通の封書。
ごく一般的な薄水色のA4サイズの封筒だ。
宛名は俺宛だが、…………差出人の名前がない。
それを手にして、嫌な感じがした。
こういう仕事をしていれば、
誰かしらの恨みを買う事だって拭えない。
更に、自慢じゃないが、完璧と言っていいほどの容姿に
御影という地位まで手にしていたら
何かしらの攻撃を受けてもおかしくない。
今までも全く無かった訳じゃない。
仕事に対して努力を怠っている人間には
俺はいつだって鬼と化しているんだから……。
恨みや妬みなんて嫌というほど買っている。
だから、こういう事なんて日常茶飯事だ。
俺は開封せずにそのままデスク脇のゴミ箱に入れた。
「京夜様、中を確認しなくて宜しいのですか?」
「あぁ」
「差し出がましいですが、私が確認致しましょうか?」
「いや、いい。戻って仕事の続きをしてくれ」
「………………はい」
俺は再び手元の資料を確認し始めた。
そんな俺を不思議に思いつつも、彼女は自分の持ち場へと戻って行った。