オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
9 尽きない憂心
希和side
4月中旬。
御影百貨店では創業祭のイベント開催中。
毎日目まぐるしく過ごしている。
たった一つを除いては……。
半月ほど前に目にした一通の封書。
その日以来、同じ形状のものが頻繁に来るようになった。
彼宛の書類なら何の問題も無いんだけど……。
無記名なのが心配でならない。
だって、今までそんな封書が届いた事なんて一度もないんだから。
彼が言うには、よくある事らしい。
嫌がらせや脅迫めいたもの。
だから、一通や二通来たからといって動じないらしい。
だけど、今回ばかりは嫌な予感がしてならない。
かと言って、彼に逆らう事も出来ずにいた。
「行ってくる」
「はい」
顧客管理部の会議に出席する為、彼は部屋を後にした。
その間に私は、彼がいない専務室の掃除をする事にした。
普段から掃除は小まめにしているけど、
彼がいない時でないと出来ない所もある。
私は部屋に入ってまず初めに空いたカップを下げ、机の上の書類を確認する。
すると、
「あっ………」
ゴミ箱に入っている封書に目が留まった。
昨日手渡した郵便物の中にあったものだ。
それを確認すると、やはり開封はされていない。
私はドアに視線を向け、気配がない事を確認した上で
その封書を慎重に開封した。