オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
各階を回り、稟議書を配り終えて部屋に戻ると。
「あっ、お早かったのですね」
「ん」
「何か、お飲みになりますか?」
「いや、いい。この後は空いてるよな?」
「はい、何もございませんが」
「じゃあ、帰る支度をしろ」
「へ?」
「視察がてら本店に顔を出して、その後は夕食を食べて帰るから」
「……はい」
彼は既に帰り支度が整っているようで上着を着ていた。
そんな彼を待たせる訳にはいかない。
私は素早くパソコンの電源を切り、身支度を始めた。
御影百貨店の本店は創業祭の真っ最中。
あの婚約披露から1か月も経っているお陰で、
従業員は勿論の事、お客様もそれほど気にも留めたりしない。
たまにひそひそ話のように小声で指さされる事はあるにせよ、
京夜様の言った通り、世の中の関心は移り行くものだ。
店内は沢山のお客様でにぎわっていた。
そんな店内をぐるっと一周して、辿り着いたのは旅行代理店。
普段なら素通りするその場所で彼は足を止めた。
「京夜様?」
不意に足を止めた彼の顔をそっと覗き込むと、