オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「何かご用ですか?」
慌ててドアを開けると、部屋着から外出着に着替えた京夜様が立っていた。
「ちょっと出てくる」
「はい」
彼は用件だけ伝えると、何やら楽しそうに出掛けて行った。
私は不思議に思いつつも、片付けの続きに戻った。
そして、チェストの中身を衣替えし終わると、
ベッドの上に置いてある携帯が鳴った。
「はい、もしもし?」
ディスプレイには、“京夜様”の文字が。
「今から出れるか?」
「えっ?今からですか?」
「ん」
「15分ほど頂ければ出れますが……」
「そうか。悪いが、俺のベッドの上にボディバッグがあるから、車で持って来てくれ」
「はい、分かりました。どこへ届ければいいのですか?」
「悪いな。じゃあ、今からメールするな」
「はい、お願いします」
10時30分。
京夜様にしては珍しく、忘れ物をしたらしい。
だから、私は急いで外出する準備を施し、彼のバッグを手にして
彼からメールで送られて来た場所へと向かおうとしたのだが……。
あれ?
鍵が無い。
いつもここに置いてあるのに……。
玄関にあるはずのセダン車の鍵が見当たらない。
あるのは、京夜様の愛車の鍵だけ。
待たせる訳にもいかないし……。
仕方ない、これで行くしかないわね。