オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
部屋に通され間もなくすると、食欲をそそる白い湯気を纏った料理が運ばれて来た。
先付のおぼろ豆腐を始め、口取りの唐墨大根と胡麻豆腐は勿論の事、
椀物の蟹真蒸・湯葉煮……どれも頬が落ちるほどの絶品の味。
「どうだ?言葉が出ないところをみると、口に合ったみたいだな」
「っ……、はい。とても美味しゅうございます」
ついつい目の前のお料理に夢中になっていて、
彼の事をすっかり忘れていた。
私とした事が………。
箸を置けないほど虜になっていたようだ。
その後も造里、炊き合わせ、焼き物、揚げ物、酢の物、皿物……
どれも美味しすぎて、“美味しい”しか声にならない。
そんな私を楽しそうに眺める京夜様。
彼の口にもあったようで、外食では珍しく箸が進んでいる。
最後の水物、抹茶豆腐の黒蜜がけをぺろりと平らげた頃には、
とうに12時を過ぎていた。
「希和が豆腐に目が無かったとはな……」
「フフッ、意外でしたか?」
「ん~、まぁな。武術をしてたから、てっきりガッツリ系が好きとばかり」
「あ、それもあながち間違いではありません。ステーキだとかとんかつも好物ですけど、豆腐は別物です」