オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


「……わ、…………希和」


心地よい声音がして瞼を開けると、

目の前に愛おしい人の姿があった。


「希和にしては、珍しいな」

「っ……」


そうだ!

今日は彼と遠出していたんだわ。

彼が“少し休むといい”と言うものだから、

ついついお言葉に甘えて目を閉じていたら、完全に寝てしまった。


恥ずかしさを隠すように前髪を触るふりして、起き上がる。

そして、先に車を降りた彼の元へと。


着いた先は国内でも有名なテーマパーク。

昨年のデートスポットランキングで1位を獲得した場所。

テレビで観て、一度は行ってみたいと思っていた。


既に日が傾き始めていて、東の空が茜色に染まっている。

そんな夕空を背に入場口へと歩いて行くと。


「へっ?」


おかしい。

これって、もしかして……。


行楽シーズンの週末と言えば、大勢の人で賑わっている筈なのに。

駐車場もパーク内も人影がない。

いるかと思えば、テーマパークのスタッフのようだ。


「京夜様」

「………ん?」

「来園客は2人だけのようですね」

「フッ、…………かもな」


彼の意図が分かった私は、天邪鬼な言葉を口にした。

すると、澄ました顔でスッと手を握られた。


< 282 / 456 >

この作品をシェア

pagetop