オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
不敵な笑みを浮かべながら、南の空を眺めていた。
「京夜様?」
無言のまま眺める彼の横顔の奥に視線を向けた瞬間。
視線の先に色鮮やかな大輪の華が見事に咲いた。
次々と咲き誇る大輪の華を前に瞬きも忘れ見惚れていると、
彼の長い腕にそっと包まれた。
「こんな風にゆっくりと過ごすのも、いいもんだな」
大規模なプロジェクトが幾つも重なっている為、
休日らしい休日を過ごす事も難しい。
それでも、私は彼の傍にいれるだけで十分なのに。
彼はこうして私をいつも喜ばせる。
仄かに香る彼愛用のフレグランス。
レザーのジャケット越しに伝わる彼の体温。
そして、心地よい胸の鼓動。
いつまでも感じていたい。
そう心から思った。
彼の体に身を委ねるように寄り添うと
彼は口元を緩めて肩をきつく抱き寄せた。
「希和」
「……はい」
「もうすぐだな」
「…………そうですね」
刻々と結婚式の日が近づいている。
式場やドレスもほぼ決まり、
後は新婚旅行先の詳細を決めるだけ。
なのに、あまり実感がない。
結納の時の方が緊張したし、不安が募っていた。
マリッジブルーってよく聞くけど、
悩まない事に不安になる事もマリッジブルーって言うのかしら?
左薬指に輝くエンゲージリングに指先を滑らせると。