オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
ゲートをくぐり、駐車場へと戻った私達を待っていたのは……。
「京夜様、…………これは?」
「ん?…………どうだ?」
「どうだ、とは……?」
「俺の好みで選んでしまったが、以前、カタログでコレ系の車を見てなかったか?」
「えっ?……………あっ……」
数週間前に京夜様宛に届いた各外国車メーカーの最新カタログ。
京夜様ほどの地位に就くと、メーカーの方からアピールしてくるらしい。
そりゃあそうよね。
御影の御曹司が乗ってるとなれば、良い広告塔だもの。
各メーカーのカタログが届いた中で、私は比較的コンパクトな車を見ていた気がする。
元々遠出をするようなタイプじゃないし、そんな暇も無かったしね。
それに、遠出するような相手もいなかったし。
だから、免許はあっても車は要らなかったし。
だけど、買い物に出掛けたりするのにあったら便利かな?なんて考えたりもした。
まぁ、先立つものがあればの話だけど。
結婚を控え、この先どうなるのか分からないし。
御影が倒産する事なんて絶対ないだろうけど。
それでも、絶対なんて存在しないって事も理解できるから。
だから、1円でも多く残しておきたい。
私のお金なんて、たかが知れてる微々たるもんなんだろうけど。
それでも、いつの日か……。
訪れることはないであろう日が、もし来たのなら……。
その時は、誰よりも早く彼の力になってあげたいから。
私は無駄遣いせずにとっておくつもりでいる。
だから、車を買おうなんて、微塵も考えたことが無かった。
「京夜様……」