オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
“して下さい”って言われると、こっちの方が照れるが。
希和が嫌で無いって事は分かった。
「京夜様っ、ありがとうございます!」
「んっ……」
手にしていたカップをキッチン台に置き、
彼女は長い腕を伸ばして、俺の首に抱きついて来た。
そんな不意打ちの彼女に驚かされつつも、やはり嬉しくて堪らない。
いつも俺との距離を保って、一歩二歩離れた所にいるから。
どうしても俺の方から近づかないと彼女に触れる事が難しい。
こうして、彼女が毎日抱きついて来てくれたら、どんなにいいか。
俺は彼女の背中をそっと支え、耳元に囁きかける。
「希和がその気なら、別に式まで待たなくとも、今からだってイケるぞ?」
「へっ?」
彼女をちょっとばかり驚かせようと意地悪したつもりだが、
希和は本当に考え込んでしまった。
「ん~?………ん~ん、………え?…………あれ??」
小首を傾げて、挙句の果てには俺の腕を払い、
人差し指をこめかみに当て、難しい表情まで浮かべた。
「おいおい、冗談だって」
「え?」
「マジにするな。お楽しみは挙式後までとっておかないと」
「……………京夜様」
「ん?」
「何やら、話が噛み合ってないような……?」
「………………どういう意味だ?」
考え込んだと思ったら、急に不安そうな表情を浮かべた希和。
こっちまで不安になって来る。
俺、何か間違えた事を言ったか?