オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
1 倖せと憂慮
京夜side
玄関ドアのパスワードを入力し、ふと手が止まった。
「………ごめん」
「へっ?」
「いや、何でもない」
俺のすぐ後ろで、
馬鹿デカいスーツケースを手にしている彼女。
こんな寒い夜遅くに薄着で我慢してた理由。
俺がパスワードを変更したから入れなかったんだ。
ついさっき彼女の手を握ってた時、
彼女の手は凍えるほど冷たかった。
こんな状況にしてしまった自分に、無性に腹が立つ。
俺は素早くドアを開け、室内に彼女を招き入れると。
「京夜様」
「ん?」
「何ですか?……それ」
「………?」
玄関から廊下を通過し、リビングへと入ると
彼女の視線は俺の手元を見つめていた。
俺は釣られるように視線を落とすと、
「あぁ、これか?見たら分かるだろ、コンビニの弁当だ」
「えっ?!………どっ、どういう事ですかッ?!」
俺の言葉に驚愕の表情を浮かべる彼女。
まさか、この俺がコンビニの弁当を買ったとは思いもしないだろう。
俺が苦笑し、リビングテーブルに弁当の入った袋を置くと、
彼女は物凄い勢いで室内を見回し始めた。