オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


あっ、あの時の男か……。

とうに記憶から消し去った出来事の片隅で、希和に抱きついた男がいた。


日本人男性の平均身長171㎝よりも高い希和。

その彼女より遥かに高く、そしてガタイもいい。

Yシャツ姿だったが、明らかに体を鍛えている、そんな感じだった。


男装していた彼女を見破り、

人前で恥ずかしげもなく抱擁するくらいだ。

ただの友人だとは思えない。


その辺にいる女子大生とは違い、

防衛大の学生は派手な化粧はしないだろう。

だからこそ、すっぴんの希和を見破れたのかもしれない。


男性用のスーツと言っても、

パンツスーツだと思えば、見えなくもない。

今時のスーツは意外と洗練されているしな。


だが、腑に落ちない。

なぜ、抱き締める必要があったんだ?

体育会系は皆、あぁいう輩なのか?


思い出せば思い出すほど、腹立たしい。

この俺でさえ、彼女に触れる事に躊躇する時があるというのに。

大事な彼女に俺の許可なく何度も触りやがって!


俺ほどではないが、写真の男がそこそこ二枚目なのが余計にムカつく。

もしかして、希和が好きだったヤツだとか?


俺はハッとし、報告書を閉じた。

考えるのはやめよう。

気分が悪くなるだけだ。

今の彼女が俺だけを見ていれば、それでいい。

過去がどうであれ、これからが重要なんだから。




俺は八雲綾女と峰菱悠人の関係性と動向を更に探るように指示を出した。

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