オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「っ…………、ごっ、めんなさいっ」
「大丈夫か?」
「…………はい」
私は踏ん張ってみたものの、よろけて護衛の男性の肩に接触した。
そんな私を気遣って京夜様は振り返り、私の左手をぎゅっと掴んだ。
私は必死に笑顔を張り付け、体勢を崩さぬよう全神経を集中させた。
………大丈夫、落ち着いて。
大勢の報道陣に囲まれ揉みくちゃにされながらも、
今私に課せられた任務を全うするのみよ。
そう自分自身に必死に言い聞かせた。
右手でクラッチバッグをしっかりと持ち、脇を締めるようにそれを体に密着させて。
左手は京夜様の右手ときつく繋がれている。
そんな私達の手をカメラに収めようと、報道陣も必死だ。
体躯のいい護衛の人達のガードの隙を狙って、容赦なく何本もの腕が伸びてくる。
こういうことも想定して、私は今日の服装を決めていた。
フォーマルの服としては珍しい、綿シフォンのワンピース。
薔薇のように何枚もの花びらを表現したデザイン。
ひらひらと揺れるそのシルエットは女性らしさを強調しつつ、
綿という柔らかい素材が、緊迫感を生む場を和らげてくれると思って。
それに、低めのヒールのパンプスは不測の事態でも身動きしやすいように。
『御影』の事を考えたら、洗練された衣装に身を包むのが当然だけど、
今日だけ、今日だけはどうしても………。
重厚感のある扉が開き、京夜様と共に関係者以外立ち入り禁止の区域へと。
最後の最後まで諦めぬフラッシュの嵐。
バタンッと大きな音を立ててドアが閉まると、私は漸く呼吸らしい呼吸をした。
「フゥ~、やっと終わったな」