オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


「んッ?!………おっ、おい………希和…………希和?」


俺の腕の中にいたはずの彼女は、突然膝から崩れるように倒れ込んだ。

一瞬の出来事で何が起きたのか、分からない。

必死に彼女を支え、視線を落とせば、彼女が………。


「希和………希和っ!!」


彼女の頬に触れても、反応がない。

力なくその場に崩れる彼女。

俺は膝をつき、希和を抱えるようにしゃがみこんだ。

すると、バッグを持っている手が、だらりと床に……。


「希和っ、希和!しっかりしろッ!!」

「坊ちゃまっ、どうかされましたか?!」


俺らに同行している執事の吉沢が護衛の円陣の外から割って入って来た。


「吉沢っ、希和の様子がおかしい!………希和、頼む………目を開けてくれ」


俺は必死に声を掛けるが反応がない。

彼女を支える腕が震え始めた、その時。


「こ、……これは………」


思わず漏れ出した吉沢の声に反応するように、

床に落ちたクラッチバッグに視線を落とすと、裏面に真っ赤な血が……。


「失礼しますっ」


吉沢は希和の体にそっと触れると、脇腹から下腹部にかけての所で手が止まった。

その手は、彼女のバッグと同じ色に染まって。


険しい表情で俺を見上げた吉沢は、俺の胸元に手を伸ばしてきた。


「お借りしますっ!」


スッと引き抜かれたポケットチーフ。

その行方を目で追えば、彼女の腹部に銀色に光るものが見えた。

ッ?!…………刃物だ。


「奥村っ、ここをしっかりと押さえてろ」

「あ、はいっ!」


すぐ脇にいた護衛の一人が吉沢の指示に従い、希和の腹部に手を伸ばしてきた。


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