オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
花びらのように沢山の布に覆われている服だから、
柄の部分が短いその刃物が、すっぽりと隠れていたようだ。
しかも、今日に限って吸収力のある綿素材を着てるじゃないか。
これじゃまるで………、ッ?! いや、待て。
もしかしたら………。
俺らの会話で、一瞬で辺りに緊張が漂う。
吉沢は一瞬空港職員の方に視線を向けたが、すぐさま襟元の無線マイクで指示を出し始めた。
「……―――………救急車っ、いや救急車じゃ間に合わんッ!ヘリだっ!ヘリをすぐさま待機させろっ!!」
吉沢の発狂にも似た声に反応するように、数人の空港職員が駆け寄ってきた。
俺らを囲む護衛の奴らも動揺し始める。
そんな状況を目の当たりにして、一番俺が動揺していた。
何をしていいのかすら分からない。
彼女を抱きかかえる手でさえ、震えが止まらないというのに。
「坊ちゃまっ!しっかりして下さい!!」
「……………あ、あぁ」
吉沢に喝を入れられ、漸く我を取り戻した。
彼女を死なせてたまるかッ!!
俺は異常なほど早まる動悸を堪え、彼女の体を抱き上げた。
「ヘリはどこだ、案内しろ!」
「こちらですっ!!」
襟元についてる無線マイクで指示を出した吉沢は、
動揺する護衛の奴らを手で払い、素早く誘導し始める。
「どけっ、邪魔だ!」
腹の底から声を張り上げ、無我夢中で先を急ぐ。
黒いスーツを身に纏った体躯のいい男連中が殺気立ち、
一塊となって空港内部を走り抜ける。
その異常な雰囲気に、空港内部は騒然と化していた。