オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
皆、次第に言葉が無くなり、溜息ばかりが零れ出す。
どれほどの時間をこうして待ち続けなければならないのだろうか。
『手術中』と点灯している場所から視線が外せない。
そんな中、不意に手術室の扉が開くと、その場にいる誰もが一斉に視線を送る。
だが、手術はまだ続いているらしい。
看護師が申し訳なさそうに出入りするのみ。
中で、何かあったのではないのか?
時間が経過するほどに不安が募っていった。
そして、4時間ほどが経過した頃。
吉沢が飲み物を手にして戻って来た、その時。
煌々と照らされていた『手術中』の明かりが消えた。
「あっ……」
俺は、思わず声が漏れ出した。
すると、俯いていた母親達が一斉に顔を上げ、彼女を出迎える為に立ち上がる。
皆が一心に視線を注いでいると、程なくして扉が開いた。
青いスクラブを身に纏った医師がゆっくりとした足取りで。
「先生っ!」
「娘は………、娘は無事なんですよね?!」
そこにいる誰もが同じ心境で、彼女の無事を心から願っている。
彼女の母親が医師の腕を掴み、娘の安否を尋ねると。
「手術は無事に成功しました。出血によるショック症状があったので、もう少し遅ければ、かなり危険な状態でした。術後の様子を診ないとなりませんが、命に別状はありません。どうぞ、ご安心下さい」
顔面蒼白の両親を目の前に、医師は丁寧に説明した。
「うっ………ッ…………」
「有難うございました」
彼女の母親は口元を押さえ、大粒の涙を零した。
医師は会釈し、ゆっくりとした足取りでその場を後にする。
その表情は明らかに疲労感が滲んでいた。
「後ほど、医師から詳しい説明がありますので……」
小豆色のスクラブを着た看護師が深々とお辞儀し、再び扉の向こうに姿を消す。
命に別状はないと聞いて一先ず安堵するものの、不安は尽きない。
彼女の顔を見るまでは………。