オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「京夜」
「………ん」
彼女の両親と入れ替わるように、俺と母親でICUの床を踏む。
心電図なのか、人工呼吸器の機械音なのか分からないが、
何処からともなく絶えず電子音が聞こえてくる。
看護師に誘導され、彼女のもとに歩を進めると、水枕に頭を乗せた彼女がいた。
静かに近づき、管のついた手にそっと触れる。
ありがとう、希和。
頑張ってくれて……。
思わず視界が歪む。
そして、彼女の手が、体が、とても熱い。
術後は熱が出ることもあると医師が言っていた。
だから、驚くことはないが、平常心が保てるものでもない。
恐る恐る彼女の頬に触れる。
本当は、こんな風に気安く触れてはいけないのかもしれない。
俺にはそんな権利がないだろう。
心の中で葛藤しつつも、触れずにはいられなかった。
こうして、彼女の体温を感じていられるという事は、彼女が『生きている』という事だから。
数分の面会時間はあっという間に終わってしまい、再び部屋の外へと追い出されてしまった。
彼女の両親は入院手続きをしに行っているという。
俺の母親は、フランスにいる父親に報告すると言ってその場を後にした。
「吉沢」
「はい」
俺は、俺がすべきことをする。
彼女をあんな目に遭わせた奴を、決して許しはしない。
「あの場にいた人物の特定と空港内の画像の準備を」
「既に手配済みです」
「急ぐぞ」
吉沢を伴い、俺は病院を後にした。