オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
俺は挙式を延期した。
当然、新婚旅行も。
花嫁がいないのだから仕方ない。
俺一人でどうにかなる問題ではないのだから。
携帯を握りしめ、虚しさが込み上げて来た。
こんな電話一つで、あれほど大変な思いをして準備した彼女の努力が、無になってしまうのだから。
吉沢が奴の居場所を調べている間、俺は彼女のもとへと。
「それは、………どういうことですか?」
そろそろ麻酔が切れる頃だと思い、急いで戻ったのに……。
彼女は数時間前と変わらぬ表情をしている。
酸素マスクは付けられたままだし、指先にはパルスオキシメーターまで追加されて。
「出血によるショックのせいで、………まだ意識が戻らないの」
「えっ?」
涙目の彼女の母親と視線が絡まる。
看護師の説明によると、個人差もあるが、数日意識が戻らないこともあるという。
そんなこと、聞いてないぞ。
無事に手術が終わって、皆一様に安堵していたというのに。
再び不安に駆られていた。
「心配いらないよ、京夜君。ちょっと疲れたから、少し寝入っているだけだ。そのうち、目を覚ますさ」
落胆を隠せない俺の肩にそっと手を乗せる彼女の父親。
本当なら心配で堪らないだろうに。
「すみません、弱気になって。………そうですよよね、そのうち、いつもの笑顔を見せてくれますよね」
俺は必死に笑顔を張り付け、平然を装った。
けれど…………
三日経っても彼女は目を覚まさない。
時間が経つほどに不安は増し、焦りが募っていった。
そして、俺と吉沢を乗せた小型専用機は、とある場所に到着した。