オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
俺はゆっくりとした所作でその地を踏んだ。
近くに高い建物が無いせいか、初夏の青空が見事に映えて。
俺はそんな青空を眺め、胸が締め付けられた。
今日は、俺と希和の結婚式のはずだった。
彼女が望んだ『真っ青な空の下で』を叶える為に世界中から探し出した地。
彼女の純白のウェディングドレスが海風に靡く中、永遠の誓いをしようと………。
衣装合わせでドレスを身に纏った彼女の笑顔が、瞼の裏に焼き付いている。
大丈夫。
少しだけ時期がズレるだけだ。
挙式自体が無くなったわけじゃない。
彼女が元気になったら、挙げればいいだけのことだ。
俺は自分自身に必死に言い聞かせた。
御影の力をもってすれば、出来ない事なんてない。
普段は入ることの出来ない場所であっても、上層部の連中を動かくことくらい容易いもんだ。
俺はこの時、自分が『御影』であることに心から感謝した。
媚びへつらうように頭を深々と下げて、上層部の人間が自ら出迎える。
だって、こいつらの頂点である人物に、いとも簡単に話をつけてあるのだから。
事前に根回しをしていた俺らはVIP待遇で応客室へと案内された。
俺は黒革のソファーに腰かけ、窓から覗く青空を眺め大きく深呼吸した。
数分後、緊張した面持ちで現れた人物。
カーキ色のつなぎのような服を身に纏った男。
程よく日に焼けた肌、男の俺でも惚れ惚れしそうな体躯。
極めつけは、映画俳優にでもいそうなワイルド系のモテ顔。
この俺様ほどではないが、中々のイケメンだ。
俺は腰を上げ、男に左手を差し出した。