オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
希和だとッ?!
彼女の名前を呼び捨てにしていいのは、ご両親と俺だけだ。
俺の目の前で、気安く名前を呼ぶことすら許さん。
実際、目の前のこいつが悪い訳じゃないんだが、
何故か、心底気に食わん。
俺の知らない彼女を知っているというだけで腹立たしいのに
呼び捨てにした挙句、謝罪の言葉が未だ無い。
俺は1万歩譲って、理性を保った。
「手術は成功したが、未だ意識不明のままだ」
「ッ?!……………そうですか」
驚愕の様子で焦点が合っていないように見える。
だが、こいつに同情するつもりはない。
吉沢が差し出した封筒には、空港での一部始終を収めた画像と
希和が俺に内緒で保管しておいた、俺のもとに不定期で送られてきた封書だ。
更に、希和の腹部に刺さっていた凶器の画像。
実物は既に警察に証拠の品として押収されている為、
こうして画像でしか見せることが出来ない。
「ご存知かと存じますが、希和様は京夜様のご婚約者様でいらっしゃいます。本来であれば、今日が挙式の日でございました」
「えっ?!」
「メディアには挙式関連の詳細は非公開にしておりましたが、あの日、………希和様がお倒れになられた日が、婚前の公式行事最後の日でございました。そして………その後、お二人はご出国なさる手筈になっていたのです。それが……」
俺の険しい表情を酌んだ吉沢が、言葉を詰まらせながら峯菱に事の次第を説明した。