オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


父親が護衛している官房長官の故郷が、ここ宮崎だという事もあり、

旬のこの時期になると、お裾分けと称して頂くそうだ。


貴重な上、高価なそれは、彼女の誕生日ケーキを華やかに彩ってくれたそうだ。


この地に来たからには手に入れないと。

彼女の喜ぶ顔が見たいから。



早朝という事もあり、観光客の姿もまだなく、

俺はじっくりと吟味し、桐箱入りの5Lを10玉購入した。


「ヨシ、帰るぞ」


滞在時間約2時間。

移動時間の方が遥かにかかるが、そんなことはどうでもいい。

すべきことをし、こうして土産まで手に入れることが出来たのだから。




17時過ぎに彼女がいる病院に到着した。


昨日、彼女は緊急搬送された病院から、御影かかりつけの大学病院へと転院した。

勿論、特別室に。

大物芸能人や財界の大物が入院するための部屋。

勿論、マスコミの目を避けるための配慮ではあるが、

俺にとってかけがえのない唯一の女性を預けるんだ、それ相応の設備が整っている場所でなければ……。


逸る気持ちをグッと堪え、静かに廊下を歩く。

すると、窓から心地よい風が吹き込んできた。

不意に、俺が運転する愛車でドライブしている時の彼女の横顔を思い出した。

海風で乱れる髪をそっと押さえながら、

『すごく心地いですねぇ~』と笑顔を向けてくれた時のことを。


俺は重症かもしれない。

こんな些細なことにでも、彼女を連想してしまうのだから。

それくらい彼女のことを想っているということだな。



「ご苦労」


部屋の入口に配備させている御影の護衛に声を掛け、俺は静かにドアを開けた。


彼女の母親は不在のようだ。

サイドテーブルの上に書置きが残されている。


俺はそっと彼女の頬に触れた。


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