オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
久しぶりの二人きりの時間。
こんなにも1分1秒が大切で、愛おしいと思ったことは無い。
彼女と一緒にいると、初めて経験する事ばかり。
改めて、彼女の存在の大きさに気付かされる。
俺が人間らしくいられるのは、彼女がいるからだ。
頬に触れた指先をそっと滑らせ、優しく撫でる。
ハリのあった肌が、数日でこんなにもカサカサに。
いつも呪文のように『UV、UV』と口ずさんでいた彼女。
学生時代はお手入れを全くしていなかったと後悔し、
最近はあれこれ試行錯誤を重ね、自分で化粧水などを作るまでになっていた。
そんな彼女が………。
すっかり潤いを失った唇を親指でそっとなぞった、その時!
ッ?!
本当に一瞬だが、彼女の眉間が僅かに動いた気がした。
「希和、…………希和?」
思わず彼女の顔を覗き込んで声を掛けるが、反応は無い。
無意識に降下する視線。
はぁ……、思わず溜息が零れ出す。
情けない。
彼女に目覚めて貰いたいと思うあまり、気のせいだったようだ。
俺は点滴が固定されている彼女の手にそっと触れた。
「あんなにも、喜んでたのに。ここだけ、時が止まってるな………」
普段はあまりネイルをしない彼女だが、
さすがに挙式は完璧にしたいと言い、
両家の母親と共に御影御用達のサロンで施して貰ったブライダルネイル。
それを目にした俺は、胸が締め付けられた。
ん?
何かがおかしい。
俺は彼女の指先を握り、違和感を覚えた。
「あっ………」