オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


そこには、俺自ら嵌めた婚約指輪が無かった。

よくよく考えれば、仕方がないと理解出来る。

病院に搬送され、すぐさま手術。

そして、そのまま入院生活となった訳だから、

当然、貴金属類は身に着けられないことを。


だが、無性に切なく感じた。

彼女ではなく、俺でもない。

第三者が、あれを外したという事実が。

分かっている、状況が状況なだけに止むを得ないことくらい。

けれど………。


自責の念に駆られた俺は、空いている左手をベッドのサイドレールに打ち付けた。

その時、視界に入ったビニール袋。

そういえば……。


宮崎を立つ前に立ち寄った道の駅。

普段は絶対立ち寄ったりしないの場所だが、

吉沢が、希和の両親に土産を買うというので立ち寄った。

勿論、俺は車内で待っていたのだが。

そしたら、希和用にも幾つか用意したと、病院に到着した時に手渡された。

病室に来た時、無意識にサイドテーブルの上に置いたっけ。

中には何が入ってるのやら。

袋の中を確認すると、小箱に入ったものが4つ。

その1つを手に取る。


「菴羅妃殿下?」


菴羅(あんら)とは、マンゴーの事だったよな?

太陽のタマゴを買いに行った際に、パネルにそう書いてあった。

ネーミングセンスは如何なものかと思うが、パッケージのデザインは結構イケてるな。

職業病が出てしまった。

ついつい目新しい商品を手にして、吟味する癖が……。

やれやれと思いつつ、裏面の商品概要を確認した俺は、思わず目を見開いた。

フッ、吉沢の奴。

キザなことをしやがって。


俺は吉沢が用意してくれた『菴羅妃殿下』の封を開けた。


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