オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
12 二度目の夜
希和side
ワクワクするような爽やかな香りと共に、
一声聞いただけで胸が高鳴ってしまう、あの人の声が耳に届く。
近くにいると分かっただけで、体が勝手に反応を示す。
だけど、ベッドに全身が張り付けられているみたいに重く、動かない。
渾身の力を込めて重い瞼を押し上げ、
微睡む視界の中からあの人を探す。
すると、指先にひんやりとした感覚を覚えた。
ゆっくりとなぞられるそこは、私とあの人を繋ぐ証があるはずだけど。
でも、すぐに分かってしまった。
大事な大事なそれが、そこには無いということを。
彼もそのことに気を留めているようだ。
だって、恋しそうにそこを何度も何度もなぞるから。
鈍い痛みを伴う腹部。
鉄の棒のように硬く、重い脚。
そして、鈍器で殴られたかのような激痛がする頭。
意識を集中させないと、再び深い眠りに落ちてしまいそうな感覚。
薬の副作用なのかもしれないが、
痛みを感じるという事が、この上なく嬉しくて堪らなかった。
だって、それは…………私が『生きている』という証だから。
今日が何日なのか。
あの日から、何日経っているのかすら分からない。
だけど、ここがロサンゼルスでなく、日本だということは理解出来た。
だって、院内放送が日本語だから。
結婚式を駄目にしてしまったことも。
彼や両親に心配させてしまったことも。
後悔している訳じゃない。
あの時に戻ったとしても、きっと同じことをしたと思う。
彼を守れるなら、これくらいの痛み、幾らだって我慢できる。
ただ………。