オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
また一つ、傷が増えてしまった。
可愛くもなく、美人でもない。
目の保養になるようなスタイルも持ち合わせてない上、
男と間違われるような大柄な体形。
さらに、傷だらけの体では、本当に申し訳なくて。
きっと、そう遠くない未来で、彼に幻滅されてしまうだろうな。
それでも今は、彼の傍にいたい。
彼が私に、傍にいて欲しいと思う間は……。
我が儘だってのは分かってる。
厚かましいのは重々承知の上で、それでも諦めきれない。
だって、彼の隣に。
他の女性が立っているだなんて、考えたくもないから。
再び訪れた、彼との時間。
私が意識を失っていた時間を取り戻すかのように。
彼はずっと私の傍にいてくれた。
面会時間が終わり、京夜様も渋々ご帰宅され、私と母親だけになった病室。
大学時代に怪我をして入院した当時を思い出した。
「何だか、懐かしい」
「何が?」
「5年前に入院した時を思い出しちゃった」
「あぁ、あの時……」
国際大会で肩を負傷し、海外で手術を受けた。
あの時は本当に心細くて、子供じゃないのに母親から離れられなかった。
怪我によるショックもあったのだろうけど、
聞き慣れないイタリア語が、まるで呪文みたいに怖くて。
その時、生まれて初めて知った。
イタリア語を流暢に話す母親が、元航空自衛官だったことを。
父親とは大学時代の集まり(今で言う合コン?)で知り合ったらしく。
母親は防衛大卒業後に航空自衛官になり、その後、幾つもの訓練を受け、
政府専用機の客室乗務員になったそうだ。
警察官を目指す父親と航空自衛官を目指す母親は、すぐに意気投合したとか。
卒業後は暫く音信不通だったらしんだけど、
母親が政府専用機の客室乗務員になり、
父親が国賓級の来日外国要人を護衛する際に再会したのだとか。
その話を聞いた時、両親が羨ましいと思った。
見えない赤い糸が、ハッキリと見えた瞬間だったと思うから。