オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「ここは俺がするから、向こうで休んでろ。…………いいな?」
久しぶりに見た、魔王の彼を。
物凄い眼光で見下ろされてしまった。
有無を言わさぬその破壊力。
口答えしたものなら、速攻で視殺されかねない………そんな表情。
ガシッと肩を掴まれ、強制連行でリビングのソファーに座らされた。
恐る恐る視線を上げると、
「珈琲か?それとも紅茶か?…………あ、そうだ!」
「…………どうかされましたか?」
「いや、何でもない。気にするな」
京夜様はハッとした表情でキッチンへと向かって行く。
気にするなと言われても、気になりますよ。
だって、京夜様がキッチンに立つだなんて。
カクテルを作って下さるのとは、わけが違うもの。
洗い物にしたって、
高級な食器を使い捨てで処分したとしても、お金の心配は要らないだろうけど。
そういう問題じゃないよね。
彼に家事をさせていること自体が問題なんだから。
彼はシャツの袖を捲って、腕時計をカウンターの上に置いた。
そして、洗い物をするかと思いきや、
パントリーから木箱を手にして戻ってきて、
何やら楽しそうにガサゴソとし始めた。
何をしているのか気になって見に行こうとすると、
人差し指を立て、『ソファーに座ってろ』を無言の命令。
私は仕方なく、カウンター越しに彼を見守ることにした。
程なくして目の前に現れたのは、………ラテアート?
しかも、色が…………。
「これ、…………抹茶ですか?」
「嫌いか?」
「いえ、大好きですっ!」
「フッ、そうか。なら、良かった」
先ほどとは打って変わって、優しい笑みを浮かべる彼。
腕組みしながら、私が口を付けるのをじっと待っている。
いつもならすぐさま口を付けるんだけど、
今日ばかりはちょっとだけ待って貰おうっと!
私はバッグの中から携帯を取り出した。